恋愛映画を恋のお手本に>越えそうで越えない一線の揺れ動き

ダブル不倫と来れば、外せない作品をもう1本。
2001年公開の香港映画『花様年華』です。
アート系作品故に、表面的に描かず説明的描写は無し!の展開。
しかし映像センスは秀逸。じれったい位の2人のもどかしさと
切なさから、不倫のラインにおける感情の揺れ動きを注目しましょう。

1962年の香港。新聞社で働くチャウは、同じ日に同じアパートへ
引っ越してきた人妻チャンと知り合う。どちらの夫婦も仕事のせいで
すれ違いが多く、部屋に1人でいることが多いのだが、ほどなくして
チャウの妻とチャンの夫が不倫をしていることに気付く。
やがて2人はお互いを意識し始め、次第に親密になっていくが…。

「どちらから言い出して不倫関係を始めたのか?」と2人は考え、
チャンは、夫から「目の前の男(チャウ)の妻」を誘ったのなら、
私は「チャウの妻」よりも価値の低い女に成り下がってしまう、
夫が「チャウの妻」に誘惑されたのなら、チャウは情けない男に
見えてしまう、と思いを巡らせます。お互い「愛されてない者同士」。
自然と「愛されたい」「愛したい」という感情で結び付きますが、
一線を越えそうで越えない…ギリギリのラインで抑えます。しかし、
チャウの執筆する小説の手伝いのため別れを演じるシーンでの涙、
そしてその帰りのタクシーの中、この流れの見方によっては
越えたようにも…これは観た人の判断に委ねましょう。そして、
このすれ違いの恋愛を象徴するスリッパの存在も要チェックです。

花様年華(2000/日本公開2001)香港・フランス
監督/ウォン・カーウァイ
主演/ トニー・レオン/マギー・チャン

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